「教育に関わる塵芥として」
「“先生”とは」
先生とは“先”に“生”まれた人に過ぎません。(20代の方々を想定して書いていますが)先に生まれた私自身から伝えられるのは塵芥なことですが,上から目線にならないように心掛け,コラムとして読んでいただけたらと思います。
私自身は祖母が会社経営をしていたこともあり,一般的には裕福な方の家庭環境で育ちました。そんな自分は大した苦労を知らず育った環境だったと思いますが,浪人をしていた18歳の時に祖母が他界し,アルツハイマーを発症していた祖母の会社の負債も発覚して,会社名義で購入していたため事務所や祖母・育った実家も差し押さえられ,住む家を失いました。そこから実家をローンで購入し,大学入学後の学費はもちろん教育ローンであったため,大学卒業時点で自分が背負っていた借金は3600万円になります(その頃は考えもしませんでしたね)。母子家庭ですが祖母に依存していた母の経済力は皆無であったため,ローン代・生活費として姉と協力してそれぞれ月10万円ずつ家に入れることにしました。この環境の変化は,自分にとって良い経験であったと思っています(文字通り死ぬ気で働いたので実家・教育ローンも現在では返済し終えています)。「若い頃の苦労は買ってでもしろ」と言われますが,その経験がなければ私自身は空っぽな人間のまま現在に至っていたと思いますし,いろいろな生徒や職業の方と接してきた中で,大学に進学する教育ローンを組めなかった方やネグレクトの環境で育った方もいたので,自分は恵まれていたと思っています。その中で教員となる方々に思っていることもあるので,もう少し以下に記してみようと思います。
「一般受験生・内部進学生・私立・公立学生の違い」
この価格設定について塾・予備校などに通ったことのある一般受験生の方は,塾・予備校の相場を知っているので安価すぎることを指摘してくれます。しかし,教員個人として生活していく上での経済面と,自分自身の経験も含めて,月1万円以下に抑えられることを第一に考えてこの価格設定にしました。一方で,内部進学生の方にはこの価格が高いと感じる方もいるそうですが,私立中高の学費や大学の学費,また塾・予備校の年間代を知らない可能性が高く,それは危険な価値観であると言わざるをえません(塾・予備校は年間100万円以上,大学4年間の学費は400~500万円です。また個別指導塾では生徒の一回の授業料は1万円程ですがその授業料に見合ったクオリティの授業は提供されているのでしょうか,そして大学生のバイト時給はいくらでしょうか,一番闇が深いと思います)。
これは知っておいてほしいことですが,「教師(教員や予備校講師も含む)は社会性が低い(社会経験がない)」と世間的に言われてしまうことがあります。小中高大を学校教育で育ち,一般企業で働いた経験もないまま教師になった場合(教育費を全て親御さんが支払っていて,バイト経験もなく仕送りをもらっている場合が一番危険です),進路相談はできるでしょうか,教えている生徒の親御さん(社会人)との面談はできるでしょうか。他にも私公立関係なく様々で,途中で経済・家庭環境が変化する生徒もいます。特に公立学校の場合であれば,生活保護を受けている家庭・給食費を払うのも困難な家庭など様々な生徒がいますが,その生徒にどう接するべきかアドバイスを出来る経験があるでしょうか。
予備校講師は専門教科だけを教えていれば良いですが,教員は人を育てる側面も必要なので,教員自身が自分を成長させていかなければいけません(生徒に受験期の一年間で成長してもらいたい気持ちから,真面目な話を時折しています)。歴史を多面的に見る必要性があるように,先生自身もアンテナを広げて多面的に見られるようになっていただきたいと思います(歴史を多面的に見ろというくせに,生徒に対しては一面的にしか見られない先生がいるのは皮肉なことです…)。前述の自分自身の経験やそれよりも大変な環境で育った方々の話を聞くことが出来たのは,自分にとって何よりも重要な学びの場であったと断言できます。「愚者は自分の経験から学び,賢者は歴史(他者の経験)から学ぶ」とは「鉄血宰相」オットー・フォン・ビスマルクの名言ですが,物の見方や価値観は,自分の経験則だけや同じような環境の人々と過ごしているだけでは何も成長できないでしょう。また,スマイルズの『自助論』にも書かれていることですが,「苦しい環境から成長しなかった人」・「苦しい環境から成長した人」・「恵まれた環境から成長しなかった人」・「恵まれた環境から成長した人」の中で最も尊敬される人は,最後の「恵まれた環境から成長した人」です。私自身は「苦しい環境から」の部類に属すると思いますが,恵まれた環境から成長するには克己心が無ければ成長できません。私自身もまだまだ未成熟な部分が多々ありますが,「生徒も先生(自分がしていない経験をしている生徒にたくさん出会えることから)」という考えのもと日々是成長していきたいと思っています。まだ書きたいことはありますが,先に生まれた人間として先生方の一助になれればと書かせていただきました。最後までお読みいただきありがとうございます。